プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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新幹線殺傷事件再び-テンプレート量産型殺人者と「中世に還る日本の旅」

 6月9日夜、東京から新大阪へ行く新幹線の車内で、小島一朗(22歳)がナタにより他の乗客を襲撃し、男性1人を殺害・女性2人に重傷を負わせて逮捕された。

 その犯行動機として何を語ったかと言えば、相も変わらず「むしゃくしゃしてやった。誰でも良かった」だそうである。

 

のぞみ殺傷の男「誰でも良かった」…客に馬乗り : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 

新幹線殺傷:襲撃、右隣の窓側18E女性、次に18C女性 - 毎日新聞

 

新幹線殺傷:同居の祖母「自己否定多く、人間関係に悩み」 - 毎日新聞


 この「むしゃくしゃしてやった。相手は誰でも良かった」というのは、世の中ではネタとして言われることさえ多い、通り魔的犯罪者の決まり切ったテンプレート発言である。

 誰も彼も、まるで口裏を合わせたかのようにこんなことを言う。

 やってることは確かに派手だが、しかしもちろん独創性はカケラもない。

 こういう言い方もなんだが、多くの人は「もう飽きたよ」と思っているのではないか。ガッカリしているのではないか。

 たぶんこういう人たちの「心の闇」とは何かを問うのは、そんなに面白いことではないだろう。

 金太郎飴というか似たり寄ったりというか、誰を取ってもべつだん変わり映えのしないものなのだろう。

 今回の小島一朗も、どうやらそういった特に面白みのない「量産型殺人者」の一人のようである。


 さて、新幹線内で殺傷事件が起こるのは、これで二度目である。

 一度目は2015年6月30日、71歳の男が自分に火を付けて焼死し、巻き添えを食って52歳の女性が窒息死した。

東海道新幹線火災事件 - Wikipedia

 

 そして今度は車内にナタを持ち込んでの発作的襲撃である。

 小島一朗は「むしゃくしゃしてやった」と言っているが、もちろんそんなものを持ち込んでいるのだから殺る気満々でいたのである。

 まったくこうなると、おちおち新幹線で出張や旅もできないというものだ。

 持ち物チェックがなされてないだけ飛行機よりさらに危険度が高いのだが(もしかしたらこういう事件が続くことで、飛行機の人気は上がるかもしれない)――

 しかしそれを言うなら、普通の電車だって新幹線と全く同じ状況にある。

 車で走れば煽り運転に遭うかもしれないし、どうも「世界有数の安全度・正確性・快適性」と言われてきた日本の交通事情も、次第に追い剥ぎとかの危険がいっぱいの中世に戻っていくかのようだ。

tairanaritoshi-2.hatenablog.com


 しかしそういう退化も、歴史的に見れば何度も何度も起こってきた。

 「人々は道に落ちているものも拾わなくなった」というのは、「国がよく治まっている」ことを指す、中国史書の(これまた)テンプレート的な書き方である。

 そういう平和な「黄金時代」は何度もやってきてはまたダメに――群盗と戦乱が燃えさかる時代に――なっていったものだ。 

 ここ数十年の日本は、「誰でも気楽に出張や旅ができる」黄金時代だったのだろう。

 しかし当然と言えば当然のように、いつまでもそんな時代は続くことはなく、またしても旅は危険なものに戻るとしても何の不思議もないというものだ。

 思えば昔の人は、旅に出ると言えば水杯を交わして道中死を覚悟していたという。

 追い剥ぎに遭ったり病気になったり、そんな危険は確かに現実のものだった。

 そして現代の日本ではその危険とは、「変な奴」に運悪くも目を付けられることである。これはもう天災に遭うのと同じことである。

 
 テロリズムでも悪の圧政政府でもなく、一般人の中の「思い詰め型殺人者」そして「テンプレート量産型殺人者」が、日本の旅や出張や交通一般を中世に戻そうとしている。

 旅行することがリスクに感じられ、人々はますますインドア志向を強めるかもしれない、とさえ思われる。

 もしかしたら近い将来、「たった一人に出張を命じるのは配慮がなさ過ぎる」なんてことになるかもしれない。

 社員が出張するときは、企業の雇ったボディガードが必ず随行する――

 それが当たり前の時代になっても、何の不思議があるだろう。

 もしも時代が中世に戻るのなら、やっぱり武士(みたいな人たち)が台頭するだろう。

 そう考えれば、本当にビジネスチャンスというものはどこにでも転がっているものである……