東京大学などの研究チームが、南鳥島付近の海底(日本の排他的経済水域内)に「世界需要の数百年分」のレアアースが埋蔵されていることを確認したそうである。
携帯電話部品などに使われるレアアースの世界供給シェアにおいて、中国が9割を占めているというのは有名な話だ。
この超独占状態を打破するために、あるいは価格交渉を行うために、誠に喜ばしいニュースである。
しかし実は、そんなに喜ぶべき話ではないかもしれない。
冷静に考えてみればふと気づくのだが、資源の豊富な国というのは必ずしも世界の先進国というわけではないからである。
中国がレアアースの9割を握っているからと言って、それを理由に中国が世界の経済覇権国になると断言する人はいないだろうし、
原油を大量に生産する中東の国々は、いつになっても先進国の仲間入りができていない。
それより何より日本人のほぼ全員は、「資源輸出国」と聞けばイコール「ああ、遅れた国ね」とイメージするはずである。
今の日本は、モノづくりで生きていると言うよりは、むしろ金融収入で生きている国になりつつある。
それはむしろ「進化」なのかもしれないが、これが「資源の輸出で生きている国」になると聞けば、間違いなく退化・退歩と見られるだろう。
要するに日本の将来は、第二次大戦後のサウジアラビアみたいな国になるかもしれないのである。
もっとも「中東は原油が出なくなったら終わり」というのも古いイメージで、実際には原油で得たカネを金融資産に(膨大に)投資しているはずだ。
この点はアラブ首長国連邦の政府ファンド「アブダビ投資庁」が有名で、これは世界最大の投資ファンドである。
もしかしたら50年後、いや20年後の日本は、「レアアース輸出で儲けたカネを金融ファンドで運用する」という、中東じみた国に普通に変貌を遂げているのかもしれない。
これは別に、意外でも悪くもない未来図なのだろう。
そもそも、よりにもよってこの極東の日本が世界最大クラスの工業大国になっていたなんてこと自体が、黒船の来た時点ではトンデモない妄想だったに違いないのだから……