プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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羽生結弦の五輪2連覇と安倍首相の小さな・明らかなウソ

 平昌オリンピックフィギュアスケートで、羽生結弦(23歳)がオリンピック2連覇(金メダル)を果たした。

 これはフィギュア史上66年ぶりの快挙だそうだ。

 そしてこのことで何が最も印象に残ったかって、その66年前に連覇を果たしたディック・バトン氏(アメリカ)が88歳でまだ生きていて、それどころかツイッターまでやっているということだ。

 なんかこれ、すごくないですか……?
 

www.nikkansports.com

 

www.asahi.com


 さて、それはともかくとして今回触れるのは――

 この快挙を受けて安倍首相が、2月17日夜に私邸から羽生結弦に電話をかけた件である。

 かけた以上は「おめでとうございます」と言うのは当たり前だが、なんと安倍首相――

 「演技の後半には、興奮のあまりテレビの前で握っていたミカンを握りつぶしそうになった」らしいのである。

 

www.jiji.com

 

www.sankei.com


 私はこれ、はっきりとウソだと思う。

 スポーツを見ていて「興奮のあまりミカンを握りつぶしそうになった」なんて、極度に熱狂的なプロレスファンでも決してやりそうもないことである。

 こんなこと、ただ異常者のみがやりそうなことだ。

(「興奮のあまり足を踏み鳴らしました」なら、プロレスファンもすんなり納得するかもしれない。

 重低音ストンピングと言われるものだが、これでさえ最近のプロレス会場ではほとんど聞かれなくなった。)

 いったいあなたは、本当に安倍首相がそんな状態になったと信じるだろうか。

 この発言、誰がどう聞いても「そんなわけないだろう」と一笑に付す態(てい)のものである。


 もちろんこういう発言、ジョークならば全然アリだ。

 友人などの知り合いと、この手の軽口を叩き合うというのは、非常によく見る光景だし我々自身もそんなことを言ったりしている。

 しかしどうも安倍首相、報道記事のニュアンスからして、本当にそんな状態になったと言っているようだ。


 言うまでもないが私は、こんな片言隻句を取り上げて

「このウソつきが」

「適当なこと調子に乗って喋ってんじゃねーよ」

 などと、安倍首相を非難したいわけではない。

 しかし一国の首相がこんなあからさまなウソを笑顔で言っちゃう/言ってしまいたくなる/言わせてしまうという社会の雰囲気は、やや非難に値すると思う。


 私は安倍首相が、そんなに興奮してテレビを見るほどフィギュアスケートが好きなのか、という点にまず疑問を持つ。

 選手の演技を見て「おー」とか声を上げるというのは普通の人間らしくわかるのだが、ミカンを握りつぶしそうになるほどフィギュアスケートのファンだなんてこと、まずないだろう。

 おそらく、というかほぼ確実に安倍首相――

 日本人選手の誰がどの種目で金メダルを取ろうと、大同小異のことを言うのではないか。

 全然興味がない種目だとしても電話をかけ、興奮しましたとか言うのではないか。

 そしてまた、安倍首相でなくても誰が首相であったとしても、そんなことを言うのではないか。

 なんかこれ、バカバカしいというか寒々しい光景である――

 民主主義国の一国のトップって、そんなにしてまでスポーツ選手に、引いては国民におもねらなくてはならないのか。

 いくら自分が人気商売の政治家だからって、金メダルさえ取れば(別に自分はそんなに興味はなくても)さっそくに電話をかけて祝意を伝えなければいけないのか。


 そもそも「自国の選手が金メダルを取った直後、首相や大統領がその選手に電話をかける」ということ自体、ありふれたことなのだろうか。

 私にはこれ、ずいぶん(いかにも人気取り的な)浅ましいことに感じられるのだが、どうだろう。

 アメリカの選手が金メダルを取ったら、トランプ大統領は早速に電話をかけているのだろうか。 

 フランスの選手が金メダルを取ったら、マカロン大統領は早速に電話をかけているのだろうか。 

 今回のオリンピックでは、サフチェンコ&マッソの男女ペアがドイツとして(奇しくも)66年ぶりの金メダルを獲得したそうだが――

number.bunshun.jp


 メルケル首相は、この人たちと早速電話で話したのだろうか。

(こういうことって、日本のメディアでは報道する価値もないことだろうから、私には全くわからない。)


 少なくとも私が首相なら、さっき金メダルを取ったばかりの選手と電話で祝意を伝えようなどとは決して思えない。

 人気取りと思われるのが嫌だということもあるが……

 何よりもまず、そのスポーツについてほとんど何も知らないというのに(普段から見てるわけでもないのに)、いったい何を話せというのだ。非常に困っちゃうではないか。

 しかし日本の首相というのは、そういった万難を排して金メダリストに電話をかける。

 きっと、そうしなければ「金メダリストに祝意を伝えないなんて、一国の首相として配慮が足りない/けしからん」とか批判されるのが嫌なのだろう。

 何となく日本には、そういう雰囲気があるのだろう。

 だからこういう「常識・礼儀」が自然形成されるのだろう。

 そう思うと日本の政治家というもの、悪党なのか哀れなのかわからなくなってくるというものだ……