昔は確かに、“ミスコン廃止論”が強勢だった時代があった。
女性を品評してランク付けするなんて女性蔑視だ、という思想が大きく伸びた時代があった。
ところが今の日本ではそれが夢だったかのように、ミスユニバースとかミスキャンパスとかいった話題が、何の臆面もなく大新聞社の公式サイトに載り続けている。
現代日本は、ほぼ完全に美人資本主義に制圧されたかのように見える。
しかし今回の「F1レースクイーン廃止事件」は、そのちょっとしたターニングポイントにはなりそうだ。
日本の自動車メーカーが、今後モーターショーで女性コンパニオンの起用を取りやめるということは、結構可能性がありそうである。
女性蔑視の非難を恐れた(面倒がった)新聞社が彼女たちの写真を載せなくなるのも、まあ可能性がありそうである。
もちろん、メディアがこぞって美人を載せたがるのには、完全に理解できる理由がある。
要するに読者の受けが良く、クリック数を稼げるのである。
たとえ写真が載っていなくても、ただ“美人”と文字が書いてあるだけでクリックしたがるのが、男の――いや人間のサガというものだろう。
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しかしそれが、「女性蔑視」と非難されるとなると――
やっぱりそれは、おいそれと載せられないものになっていくはずである。
ところで「レースクイーンは女性蔑視だから廃止すべき」という意見には、必ず「それは女性の選択肢を狭めるもの」という反論が返ってくるものだ。
だが大半の人が思うように、そういう反論をするのはたぶん、十中八九が男性なのだろう。
私は女性ではないが、女性の半分以上は今回のF1報道を聞いて、「いいことじゃないの?」と思うと思う。
ミスコンが女性蔑視でありレースクイーンなんてものは女性性を商売にしているからけしからん、と感じる女性は今のこの時代であっても非常に多く――
ミスコンやレースクイーン・コンパニオン、そしてグラビアアイドルなどという“女を売り物にする”存在への反感は、女性の心の底流に深く流れていると思う。
なるほど、元クラリオンガール(グラビアアイドルの一種)だった蓮舫は、いまや国会議員である。
もし彼女がグラビアアイドルでなかったら、こんなことにはなっていまいとほとんどの人が思うだろう。
私は国会議員がエラい存在だなどとは言わないが、しかし世間的には国会議員になるなんて「女性の社会進出の頂点」と感じられるに違いない。
そういう意味で確かに、“女を売りにする職業”がなくなるのは、女が自分で自分の首を絞めることではあるかもしれない。
しかし圧倒的大多数の女性は、そもそも“女を売りにする職業”に就こうとは(就けるとは)夢にも思っていないものである。
そういう職業がなくなったとしても、自分には関係ないことである。
自分はそういう職業に就こうとは思わないし、ましてやそれを足がかりに社会進出しようなんて思ってもないのだから、そんな職業がなくなったってどうでもよい。
むしろ「いい気味だ」くらいに感じていても不思議はないだろう。
さて、それはともかく今回のF1の決定は――
日本のフェミニストにとっても、久々の朗報であり戦果拡大のチャンスでもある。
これを足がかりに、水着やレオタードの女の子をコンテンツにするようなメディアに対し、大攻勢に出る好機である。
そして夢のようなことを言うのだが、フェミニストって、やっぱり厳格イスラム教と親和性があるのではないだろうか。
厳格イスラム教とは、要するに全身をフードで覆い、外からは目しか見えなくすることである。
フェミニストと厳格イスラム教なんて水と油、決して交わらないと思うところだが――
少なくとも「女性性を売り物にしない/させない」社会を目指すという点で、両者の想いは一致しているわけである。
振り返ってみれば、共産主義を不倶戴天の敵とした(公言していた)ナチス・ドイツさえ、独ソ戦まではソ連と不可侵条約を結ぶという驚天動地の外交をやっていたものだ。
これを考えれば、「フェミニスト&厳格イスラム教」という“夢の同盟”も、そんなにあり得ないことではなさそうである。
欧米や日本のフェミニスト団体が、なぜか(世界で一番女性を抑圧しているはずの)厳格イスラム教国にあんまり非難を行わない(ように感じられる)のは、その可能性を充分に示唆している――
と見るのは、うがち過ぎだろうか……
【蛇足】
本記事「その1」に引用した記事によると――
イギリス国営放送(BBC)が実施した「F1にレースクイーン(グリッドガール)は必要か」というアンケート調査で、60%が「必要」と回答したという。
おそらくこのアンケート、回答者のほとんど男性だと思われるのだが……
それにしても、私も「レースクイーンは女性蔑視だから廃止すればいい」と強く思っているわけではないが、
しかしさすがに「必要かどうか」と聞かれれば、「まあ、必要じゃないですね」と答えざるを得ない。
それでも60%が必要だと答えたというのだから、うーむ、イギリス人……