これ、前から思っていたのである。
11月21日、コンビニチェーンのミニストップは、その全店舗で成人誌(エロ本)の取扱いを中止すると発表した。
コンビニの成人誌コーナーで売っているエロ本って、やたらどぎつい表紙のが多いのはご承知のとおり。
たぶん日本にある程度滞在した外国人が疑問に思うことが二つあり――
一つは、「暴力団(犯罪組織)事務所とわかっている建物が、公然と街中にあること」。
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もう一つが、「街中のコンビニでどぎついエロ本が普通に陳列され、売られていること」ではないだろうか。
かねてから不思議なのは、「いったいコンビニであんなエロ本を買う人がそんなにいるのか」ということだった。
まさか地元のコンビニで買いはしないだろうから、自宅から離れた土地のコンビニで買う、いわば“流し”の客がいるのはわかる。
だがああいう本って、普通はネットか専門店で買うのが“常識”だと私には思える。
(たぶんそういう流しの客の行動範囲内には、信長書店も東京書店もないのだと思われるが……)
そんなにどこのかしこのコンビニも置いておくほど、買っていく客は多いのだろうか?
しかし以前コンビニ会社の人に聞く機会があったので聞いてみると、答えは
「売れます。田舎ほど売れます」
とのことであった。
そして今回の朝日新聞の記事でも、
「雑誌の売り上げに占める成人誌の割合は5%程度」とか、
「成人誌を置くかどうかは加盟店オーナーの判断で、雑誌のなかでも単価が高く、店舗の売り上げに貢献しているところも多い」
とか書いてある。
雑誌の売上の5%が多いのか少ないのか(重要なのか重要でないのか)はよくわからないが、オーナーにとっては1%でも売上を増やしたいのが人情である。
そのうえ単価が高いのであれば、それは置きたがるだろう。
だからコンビニ大手の本社も、「置くな」とは言いがたいのはよくわかる。
(実際、今回のミニストップの試みはコンビニ業界で初めてらしい。)
しかしこれ、もし加盟店オーナーやその他のコンビニ会社が「いや、ウチはエロ本を置く。撤去しない」と言うのなら――
それはつまり、「エロ本を売らせてくれ」と言っているのと同じである。
これはなかなか、公の場で堂々と言いにくいことだ。
そしてたぶん、ミニストップの株は(比喩的な意味でも株式の意味でも)今回の発表で向上したと思われる。
“他のコンビニ会社は、エロ本を売りたがっている会社だ”という道徳的・イメージ的優位も手に入れるからである。
おそらく「エロ本撤去」の措置、他のコンビニ会社も追随していくような予感がする。
そりゃこんなこと他社にされたら、「街の“ほっ”とステーション」とかのキャッチフレーズもブラックジョークになってしまうからである。
(ほっとステーションでどぎついエロ本を売っているのだから、今の状態は厚顔無恥とさえ言える。)
また、消費者(来店者)から「何でエロ本を置かなくなった!」とクレームも入ってこなさそうなのだから、やりやすいと言えばやりやすい措置ではないだろうか?
私はどぎついエロ本がおぞましい/汚らわしいものとは思わないが――
しかし買いたければ買いたいで、専門店かネットで買えばいいと思う。(古本屋にも売っている。)
いったい日本のコンビニ会社のうち、どこが最初にエロ本の全面撤去に踏み切るかと思っていたのだが……
それをやったのは、大手ではなく中堅のミニストップであった。
これは公共的にも経営戦略的にも、やはり英断であると思う。