11月14日、ジンバブエの首都ハラレで、国軍によるクーデターが発生したようだ。
ロバート・ムガベ大統領(93歳(……))は殺されてこそいないようだが、どうやら軟禁状態にあるらしい。
そしてムガベの後継者と目されていた(……)妻グレース(52歳)は、ナミビアに逃亡したとも言われている。
もちろん日本人にとってジンバブエの政変など、あまり興味のないことである。
一方で、アフリカ諸国ってこんなんばっかりじゃないの、と冷めた目で感じる人もいるだろう。
しかしもし日本人で「ジンバブエ」の名を知っており興味もある人がいるとすれば――
それは間違いなく、「狂乱のインフレ率」によってのことに違いない。
ジンバブエのハイパーインフレは凄まじく、そのインフレ率は「億」の単位だった。
今はもうジンバブエ・ドルという通貨単位は使われていない(米ドルに切り替わっている)が、一時は「100兆ジンバブエ・ドル」でパン1斤しか買えなかったのである。
ただその最高インフレ率というのはネットを見ても様々で――
「2億パーセント」「500億パーセント」というのから、年間「897垓(がい)パーセント」というのまである。
これは、未来社会や経済パニックを描こうとする作家さえ、誰一人考えつかなかった(考えついても「バカげ過ぎてる」と書くことを止める)ほどの、マンガのような現実である。
もしムガベが独裁者でなかったら、こんなことになったのが彼の(政治指導者の)せいだというのは酷だろう。
しかしムガベは「世界最悪の独裁者」とまで言われていたのだから、やっぱり彼のせいである。
かつてプロレスラーの安生洋二(あんじょう ようじ)は「200パーセント男」と呼ばれた。
総合格闘技のエメリヤーエンコ・ヒョードルは「60億分の1の男」と呼ばれた。
それらに倣って言えば、ムガベは「(インフレ率)2億パーセントの男」である。
それにしても悲しいのは、こんなムガベもかつては「黒人を代表する闘士」だった(と見なされていた)という事実である。
革命家が革命家に成功すれば、自動的に自分が体制派になる。そしてたやすく抑圧者になる……
こんなことは今まで何度も起きてきたし、これからも何度でも起きるだろう。
93歳で大統領を辞めもせず、それどころか「100歳まで生きて死ぬまで大統領」と豪語し――
さらに後継者として自分の妻を考えていたというのが、老いぼれた革命家・闘士の成れの果てであった。
こういう人間がこれからも何人でも出てくるかと思うと、まったくやるせない気分にもなるものだ。
「政治権力/政治家の地位」を一族で世襲する、というのは、その国がどれだけ土人国であるかを判定する最も目立つ指標である。
この点ムガベのメンタリティは、問題なく「土人の酋長」であった。
しかし日本人は、これを笑ってはいられない。
この日本こそおそらく、世界最先端・最大規模の「先進土人国」だからである。
tairanaritoshi-2.hatenablog.com
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もしかしたら「土人の国」から脱却するのは、ジンバブエの方が日本より早いのではないか……
そんなことも、ふと思うわけである。