プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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座間市アパート9人殺害事件-日本では珍しい欧米型連続猟奇殺人犯の出現?

 10月31日、神奈川県座間市のアパートの一室で9人もの死体(頭部)が見つかったことで、警視庁はこの部屋に住む職業不詳・白石隆浩(27歳)を逮捕した。

(9人の内訳は男1・女8、全員が30歳未満。)


 問題の一室は6畳の部屋と4畳のロフトで成っているらしいが、頭部は玄関のクーラーボックスと部屋内の箱に入れておいたらしい。

 今のところ報道されていることをまとめると、次のようだ。


白石隆浩は今年8月22日に当アパートに引っ越してきた。

●最初の殺しは8月末、それからこの2ヶ月で計9人を殺害し頭部切断。

●捜査のきっかけになった行方不明女性(23歳)は、SNSで自殺願望を書き込んでいた。

 白石はそれを釣ったと見られるが、しかし「自殺は関係ない。殺害の同意は得ていない」と自分で言っている。

●一部の女性被害者には「性的暴行を加えてから(首を絞めて)殺した」と自分で言っている。

●「目的はカネだった」と自分で言っている。


 こういう事件を聞いてすぐさま思いつくのは、欧米の連続殺人犯たちである。

 犯罪本を読んでいれば、こういう事件は欧米では「ありふれた、凡庸な」ものだと誰もが感じるだろう。

 一例だけ挙げると、イギリスの“同性愛猟奇殺人犯”デニス・ニルセン(1945年~)。

 職業安定所に勤める彼はアパートに一人暮らしし、同性を部屋に連れ込んでは次々と殺していった。

 その動機は「一人でいると寂しい。死体とならずっと一緒にいられる」というものだった(らしい)。

 そして発覚の原因は、切り刻んだ死体をトイレに流してアパートの下水管を詰まらせたことであった。

 ニルセン以外にも、もっと性的な理由で何人も何十人も殺してきた連続殺人犯(シリアルキラー)は、腐るほどゴロゴロしている。

 (中でも最狂なのはアメリカのアルバート・フィッシュ(1870~1936年)とエド・ゲイン(1906~1984年)で、ゲインなどは一人暮ら殺した人間の皮を剥いでそれを身に着けて興奮していたという。フィッシュは自分の睾丸に針を打ち込み、殺した人間の肉を食べていた。)


 その有様は(こういうことを言ってはいけないのだろうが)まるで――

「白人男性にはこういうことをする連中の割合が高い」

 と思わざるを得ないほどである。


 しかしついに日本にも、欧米型の連続猟奇(大量)殺人犯がぼつぼつ現れてきた……

 と見てよいのかは、まだわからない。

 「目的はカネ」と言っているところを見ると、性的犯罪者としてはまだまだブレがありそうである。しかし被害者の全員が30歳未満であることは、動機の性的さを暗示しもする。

 わざわざ「性的暴行を加えてから殺した」「殺害の同意は得ていない」と自分で言って“言い逃れ”しないところを見ると、偽悪的でもありそうである。

(そしてこれは、精神に問題があると見せかけて死刑を逃れようとする布石なのかもしれない。

 「目的はカネ」と言っていることは理性があると見られそうだが、しかしそういう理性と非理性を織り交ぜて「やっぱりコイツはアタマがおかしい」と思わせる戦法だ。)


 それにしても白石隆浩という男、どうやってか自宅(しかも一軒家でなくアパートの部屋)に9人もの人間を導き入れることができたのだ。

 自宅に赤の他人を入れたことがない人も多い中で、これは際だった特色だろう。

 周囲の人から「明るい」「不気味」と印象の分かれるこの男――

(とはいえ、誰だって他人から見ればこんな風に印象が分かれるものだが)

 彼の動機が「性的」なのか「カネ」なのか、はたまた純粋な「殺人願望」なのか、「日本型連続殺人犯」の症例として興味深いところである。


 ところでこういう事件がアパートで起こると、大家さん(と管理会社)は大変である。

 テレビ中継で外観はバッチリ写されているし、ウワサはもちろん広まるしで、他の入居者は離れていくだろうし……

 もうこのアパートは、取り壊すしかないのではないか。土地を再利用もできないのではないか。


 まったく賃貸経営とは、左うちわで不労所得が入ってくるとは限らないデンジャラスな側面がある。

 たぶん入居者審査で弾くことはできなかったろうし――

 たった一人の入居者に資産も人生も傾かされてしまうことは、賃貸経営の恐るべきリスクである。