プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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文藝春秋社長、文庫本の図書館貸し出し中止を訴える-図書館は出版業の敵なのか

 文藝春秋社の松井清人社長が、10月13日の全国図書館大会で――

「せめて文庫本だけは図書館は購入しないでくれ。

 文庫の新刊を買わずに図書館で借りて読む人がいるから、出版不況の原因になっている」と図書館側に要請するそうである。

headlines.yahoo.co.jp


 この「図書館で借りて読み、自分で買わない人が多いから本が売れない(一因となっている)」というのは、ずっと以前から言われていることである。

 なるほどそうだろう、とは感じるものの――

 しかし「全国の図書館で、その本を借りて読む」人の数って、そんなにその本の売り上げを落としているのだろうか、ともやはり感じる。

 売上を減らしているのは間違いないが、それがそれほどのものかとの疑問である。

 なお、全国の図書館数(大学図書館などを除く)は、現在3,083館のようだ。

全国図書館数:【 FAX DM、FAX送信の日本著者販促センター 】


 その全ての図書館で特定の本が複数の人間に繰り返し借りられると考えれば、確かに何万部分の損失になるのだが……

 そういう仮定の計算がどれほどの意味を持つのか、わかりかねるところである。


 ちなみに私は、図書館で本を借りるということがない。その原因としては、

(1) 所有欲があるから

(2) 古本屋で安く買うから

 の2つに集約されるだろう。

 特に古本屋で100円とか200円台で買うことを覚えれば、もう新刊本なんて高くて(よっぽどのことがなければ)買う気にならない、という人は非常に多いのではないだろうか。

 どちらかというとこの方が図書館よりも、はるかに出版不況の原因になっていそうである。

 そして今回議題に上っている文庫本も、いつの頃からかハードカバーの本とあまり遜色ないくらい「高い」値段になってしまった。

 いまや一冊の文庫本が、(それほど分厚くなくても)700円とか800円することはザラである。

 この状況では、多くの人が「自分で買わずに図書館で借りる」のを選ぶのは当たり前の話だろう。


 私のような図書館本の素人が思うに、文藝春秋は図書館に「文庫本を購入しないでくれ」と訴えるよりは――

 全国の書店に対して「図書館からの文庫本発注に応じないでくれ」と訴える(圧力をかける?)方が効果的だと思える。

 もしそんなことができないというのなら、やっぱり図書館に対してもそんなことは言えない(べき)ではないだろうか。


 私は図書館を「地域の文化の中心」などと言ってやたら神聖視するつもりはないが、それはまぁ地域住民の需要に応えるラインナップを維持しようとするのは当然のことだと思う。

 しかし一方、「話題のベストセラー本を何冊も買い、大勢の需要に応えようとする」のも非常に釈然としないものを感じる。

 そしてもっと釈然としないのは、そういう形で話題のベストセラー本を読もうとする人たちの心である。

 その本が“話題の”ベストセラーである期間はあまり長くないはずなのだが、

 そういう本はその期間中、多くの人に貸し出され「予約」されることは初めからわかっているはずなのだが、

 その人たちはそんな旬の時期が過ぎても、まだその本を読みたいという熱が残っているのだろうか?

(さらに「大勢に借りられるのはわかってるのに、何でもっと何冊も購入しないんだ」と図書館にクレームを付ける人もきっといるのだろうが、何とも卑しいクレームである……)


 どうしてもその本を(すぐにでも)読みたいのなら、もちろん新刊を買うべきである。

 たとえ4000円台の本であっても、ほとんどの人にとっては「とても手の出ない金額」とは言えまい。

 そしてもう一つ出版社側の対策としては、(言われなくてもわかっているはずだが)「所有欲を刺激する」本を出すことである。

 つまり平たい話が、人が「ジャケ買い」「表紙買い」するようなイラスト・挿絵をふんだんに入れ、あるいは「揃えて本棚に並べたらカッコイイ」装丁の本にすることだ。

 ありきたりの、ほとんど無地のような表紙であれば、それは確かに「借りて読むだけでいい」人が多くなるのは必然だろう……