プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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ソフトバンク、AI採用開始 その1 「これは体のいい学歴フィルター説」について

 5月29日、ソフトバンクは2018年4月からの新卒採用に当たり、「AI採用」を導入すると発表した。
 人工知能「Watson」(IBM製)をエントリーシート評価に用い、人間がそれを行う時間を75%削減した上で、その浮いた時間を応募者との対面コミュニケーションに当てるそうである。
 この一報をひねくれて解釈すると、「これは体のいい学歴フィルターではないか」との意見がすぐ思い浮かぶ。
 もちろん時間の削減にもなるだろうが、従来もやっていた学歴フィルター作業(学歴の低い人をふるい落とす)を自動化し、そんなおおっぴらに言えないことを「AIの判定」を拠り所に誤魔化そうといういうのだろう、という説である。

 さて、世の会社が採用活動するのに学歴フィルターを用いているというのは、まさに「公然の秘密」である。
 もちろんそれは、「本当はやってはならない悪いこと」という意味で言われることが多い。
 しかし果たして、学歴フィルターは悪いことなのだろうか?

 学歴の高い人間(「いい大学」を出た人間)は頭がいい、よって仕事もよりデキる。
 むろん全員が全員そうではないが、少なくとも学歴が低い人間がそうであるより(はるかに)その可能性が高い――

 これは間違った考えであり、事実に反することだろうか?
 実のところ世の中のほとんどの人は、この考えが正しいことをわかっていると思う。
 なるほど学歴ばかり高く(学歴しか高くなく)、その他の能力(特に、例の“コミュニケーション能力”)が低くて仕事ができない人は多くいるだろう。
 しかし、ではその割合と絶対数は「学歴が低くて仕事もできない人」より高く多いのかと言えば、そんなことはないとみんなわかっているのではないか?

 おそらくソフトバンクの使うAIには――
 『エントリーシートの書き方』といった本に書いてある例文が、ことごとくインプットされるだろう。
 そのまんま書き写したようなシート、つまり有意の一致が見られるシートはハネられるだろう。
 当然、日本語になってないような文章もまたハネられる。(こういう文章を書く人は多いのである。)
 そのあげく、「結果的に学歴フィルターの役を果たしてしまいました」(「いい大学」出の人ばかりシート審査を通過しました)という顛末を迎えるのは、非常にあり得ることと思われる。
 救いがないと言えば救いのない話であるが、しかしソフトバンクのこの一件、やはり学歴フィルター云々を超える重大な意味があると感じずにはいられない。
 以前の記事でも書いたことだが、ついに人類は「AI人事」の時代、「AIによる選別」の時代を迎えたのである。