プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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谷査恵子さんに見る「働いたら負け」と「貧乏クジを引く」

 連日報道されている森友学園問題だが――

 本件で一躍「最も気の毒な人」になったのは、経済産業省の女性官僚(ただしノンキャリア)・谷査恵子(たに さえこ)さんだろう。

 彼女は1998年に経産省へ入省したのだが、2013年から2015年末まで、何の因果か「内閣総理大臣夫人付」として安倍首相夫人・昭恵氏の下へ出向していた。(2016年から現在までは、中小企業庁の経営支援部で連携推進専門官になっているそうだ。)

 なお昭恵夫人の下には、経産省と外務省から計5人の国家公務員が秘書として派遣されているとのこと。

 私は浅学のゆえ知らないのだが、総理大臣の妻や子に警護官(SP)が付くのは当然として、秘書が付くというのは当たり前のことなのだろうか?

 谷さんは、森友学園の陳情に対して、「大変恐縮ながら現状ではご希望に沿うことはできません。なお、本件は昭恵夫人にも報告させていただいております」とのFAXを送ったことで話題になっている。 

 もちろん政府としては、これはあくまで谷さんが私的に(勝手に)送ったものだということにしたい。

 そして昭恵夫人はあくまで「公人」でなく「私人」ということにしたい。

 しかし国家公務員が「出向」で5人も付いているとなれば、これはもう、どう解釈したって私人と言えるわけがない。

 昭恵夫人森友学園の経営する塚本幼稚園に公園に行った際、例の5人の秘書役(のうちの数人?)が同行していたが、その出張費は昭恵夫人が負担しており、彼らは「あくまで私的に、勤務時間外で同行していた」と政府側は答弁している。

 だが、普通に会社で勤務している人なら、むろんこんなのが純粋に自由意志での自由参加だとは思うわけがないだろう。

 表向きは自由参加でボランティアだとしても、実際は強制であり職務命令なのである。

 そういうことが世の中にありふれているのは、就職一年生でも知っていることだ。

 そして当然、谷さんが森友学園に送ったFAXというのも、一個人としてやったのであるわけがなく――

 陳情処理業務という「本業の仕事」の一環でやったに決まっているではないか?


 それにしてもこの秘書役の5人、「総理」ではなく「総理の妻」の秘書として出向してくれと言われたとき、どんな思いがしたのだろうか。

 もし「私人の」総理夫人に秘書が必要だとするなら、それは自分で給料を払って雇えとか党費で雇えと思うのが、まともな神経の人間というものだろう。

 あなたが会社勤めのサラリーマンやOLだとして、社長ではなく役員でもない(ということになっている)、社長の妻の秘書役になってくれと言われる……

 「そんなのやりたいわけねーだろバーカ!」と心の声が必ず聞こえてくるはずである。

 それが名誉だと思う人など極めて珍しいはずである。

 しかしそれでも、あなたをはじめとする宮仕えの人たちは、それを断ることができない。(あなたは断れますか?)

 それは俗な言い方をすれば、「キンタマを握られている」からである。

 そして陳情業務で返事を送れば送ったで、今回のように悪者にされヘマをやったと見なされ、社長には激怒されることになる。
 
(谷さんは安倍首相に呼び出され怒鳴りつけられたと言われている。また、国外へ左遷=島流しにされるのではないかとも言われている。)

 ああ、何という悲哀だろう。

 「働いたら負け」というのは、またしても真であることが証明されたのではないだろうか。


 谷さんは貧乏クジを引いた人である。

 行きたくもない部署に回され、そこでごく普通に(あるいは熱心に)働いたあげく、このような仕儀になってしまった。

 次に貧乏クジを引くのは、どこの誰か。

 それは、あなたなのかもしれませんよ……