プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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アパホテルvs中国(2) ホテルの本って誰が読む?は認識不足か。炎上商法と販促プロモーション

 さて、本題。

 アパホテル本(『本当の日本の歴史 理論近現代史』のことを、仮にそう呼んでおこう)が大きなニュースになったとき、私も他の人が誰しも思うだろうことを思った。

 それを一つずつ書いていく。


(1)ホテルに本を置くというのは、ひょっとして有効なのだろうか?

 全部が全部ではないが、たいていのホテルの客室には聖書と仏典が置いてあるものだ。

 東横インに泊まった人なら、そこに『内観』なる新興宗教か何かわからないような本が置いてあるのを知っているだろう。

 しかしあれ、みんな思ったことがあるだろうが、読んでる人がいるのだろうか?

 旅のつれづれに「せっかく置いてあるんなら、ちょっと読んでみようか」と思う人がいないととは言い切れないが、どうも宿泊客1,000人に1人も読んでいるとは思えない。

 『るるぶ』など読み捨ての(持ち帰り自由の)薄い雑誌類を除き――

 「ホテルに本を置く」ことがどれほどの費用対効果・宣教上の効果があるのか、これは長いこと日常のちょっとした謎であった。

 しかし今回、それが実はものすごく有効な販促プロモーションになることが証明された、と言っていいだろう。

 中国(そしてなぜか韓国も)の猛烈な反発を招き“炎上”したことで、アパホテル本はとてつもなく有名になった。

 そして有名になれば、さすがにアパホテルに泊まった人の何割かは読んでみる気になるだろう。

 炎上しなかった場合(つまり『内観』のような本だった場合)の読まれる率が0.1%だったとすれば、10%くらいには跳ね上がるのではないか?

 著者の元谷氏は、もちろん「本当の日本の近現代史」を人に知らせたい、広めたい、読んでもらいたい。
 
 その目的は大成功となったのである。

 別に予言者でなくとも、アパホテル本がこれから一般書店に平積みにされたりデカデカと新聞広告に載る光景は想像できる。

 もうこれは、著者冥利に尽きる話である。

 そして同時に、「著者(ホテルチェーンのトップ)自身がホテル客室という疑似書店(図書室)・新刊展示会場を持つ」という絶大な利点を、前例のないほどまざまざと示してもいる。


(元谷氏自身、当然このことをよく認識している。産経新聞でのインタビューを参照)

 

www.sankei.com


 これは、出版不況に苦しんでいるとされる出版社にとっても、なかなかインパクトのある事実だろう(と思う)。

 もしかすると、大手ホテルチェーンの全客室に(話題になりそうな)本を置かせてもらうことで、飛躍的に知名度と売り上げを伸ばすことができるかもしれない――

 確かに大きな賭けではあるが(ホテルに何千冊・何万冊も献本するのだから)、たとえばシリーズ時代劇の文庫本第1巻などを置けば、それなりの見返りがあったりしないか。
 
 これが私の思った、第一のことである。