プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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ディファ有明閉鎖=NOAH事務所・道場移転、定期建物賃貸借権

 12月23日、ディファ有明を運営する(株)ディファ有明から、再来年2018年6月末をもってディファ有明が閉鎖されることが発表された。

 建物所有者との定期建物賃貸借契約が2018年6月末日で満了し、所有者は建物の老朽化を理由に再契約を拒む。閉鎖後は建物は解体される予定だそうである。 

 これについて総合格闘技団体(そして鈴木みのる船木誠勝が共同創立者である)パンクラスの代表・酒井正和氏は、そのブログで「今回の発表を受け、新しいホーム会場を探すことになります」と書いている。

 しかしプロレスファンがこぞって気になるのは、ディファ有明プロレスリング・ノアの本拠地であり、事務所(本社)・道場・合宿所が全て入居していることだろう。(もちろん、NOAHの主要大会会場の一つでもある。)

 まったくこれは、NOAHにとってはとんだクリスマスプレゼントというところだろうか。

 新しい事務所・道場・合宿所をあと1年半で探して移転するというのは、会社にとってかなりの重労働に他ならない。

 新体制に移行したばかりの新生NOAHだが、本当に今の施設規模を維持できるのか、非常に心配になる。


 とはいえ、定期建物賃貸借とは「契約の更新がない」ことが最重要ポイントなのだから、万やむを得ない。

 調べてみると(ウィキペディアで見ただけだが)、ディファ有明のオープン(営業開始)は2000年7月1日の全日本プロレス大会。

 2018年6月末日が定期建物賃貸借の満了日なら、ちょうど18年の契約期間だったことになる。

 これが「定期借地権」であれば――コンビニ・スーパーが土地を借りて店舗を建てるとき多用される――、たいてい契約期間は20年に設定する。(「事業用定期借地権」である。)

 これに比べると18年間とは半端な期間だが、建物賃貸借の場合はこんな設定にすることも珍しくないようだ。

 また、所有者は(この所有者が誰なのか、どこにも書かれていないのだが)、建物の老朽化を再契約しない理由に挙げているが――

 ディファ有明の建物自体は、元々ディスコ・イベントホール「MZA(エムザ)有明」として1988年7月から1991年まで使われ、その後は月島倉庫という会社が倉庫として使用していた。

 そして、1988年以前はやっぱり倉庫だったとのこと。

 となると、建築年は少なくとも1988年以前、2018年を基準に考えれば築30年は経過していることになる。

 だいたい建物とは築30年で大改修が必要になる(つまり、その費用が必要になる)とされているので、建物所有者にその気がないなら解体を選択するのもおかしくない。

((株)ディファ有明との定期建物賃貸借契約が18年だったのも、初めからこの「30年」を基準に考えていたからかもしれない。)


 しかし、もし建物所有者に充分な収益(賃料)が入ってきていたのであれば、契約期間満了後も再契約を拒むことはなかったろう。

(とはいえ大改修は近いうちに必要になるので、その改修中はNOAHも別の場所を探さなくてはならなかったろう。)

 それがなかったということは、所有者にとってもっと儲かる利用法が――もっと高値で建物解体後の土地を貸し出せる、もしくは売却できるアテが――ある、ということだと思う。


 それにしても「ディファ有明」という名は、プロレス・格闘技ファンにとってあまりに馴染みのものであり、“聖地”と呼んでも過言ではない。

 建物が解体されても同じ場所に同じ名前の建物が新築されるならまだしも、本件においてはその予定も完全にない。

(そもそも、(株)ディファ有明は社名を変えなくてはならないだろう。)

 いずれディファ有明という名も忘れ去られ、「ここにかつて、そういう聖地があった」という感慨も、豆知識にすらならない時が来る。

 往事茫々(おうじぼうぼう)、諸行無常――

 聖地やランドマークの消滅は、確かにそんなことを感じさせるものである。