5月21日、アフガニスタンのイスラム原理主義勢力・タリバンの最高指導者であるマンスール師が死亡した。(享年50歳前後)
アフガン・パキスタン国境を車で移動中、彼個人を狙った米軍無人機の攻撃を受けたのである。
彼については、以前に記事を書いたことがある。
昨年12月1日、タリバンが幹部会を開いているとき内輪モメで発砲沙汰になり、マンスール師も死亡したかもしれないとの報道(風説)があったのだ。
しかしそれは嘘ないし誤りだったことになり、今回こそ間違いなく死亡した。(タリバンもそれを認めた。)
タリバンの新しい指導者は、ハイバトゥラー・アクンザダ師(50歳前後)。
大多数の日本人にとって、これもまた「今週のどうでもいいニュース」である。
我々にとってはこんなものより小金井市アイドル襲撃事件の方が、
小保方晴子が瀬戸内寂聴との対談の時に着ていた白のワンピースの方が、
はるかに興味深く大きな話題として感じられる。
やはりタリバンは、ここらでもう一発大きなテロをやらかす必要があるのだ。
それは同類であるイスラム国も同じで――
本拠地であるシリアのラッカ市に対し、シリアのクルド族主体の「シリア民主軍」が制圧作戦開始を宣言。
アメリカやロシアも空爆でこれに協力するという。
イスラム国とタリバン、この二つの組織は盟友であるべきはずなのだが、実際には仲が悪い。
イスラム国はまだしも元気で、つい5月23日にはシリアの2都市で自爆テロなどの攻撃を敢行、145人を死亡させている。
しかしこれもまた、日本人にとっては「ああ、またですか」というような「どうでもいいニュース」の一つだろう。
こんなニュースをクリックするよりは、ベッキーのテレビ復帰の方の記事をクリックしたくなるのも無理はない。
もちろん本当はベッキーだの小保方晴子のファッションだのの方がずっとどうでもいいニュースなのであるが、人の心はそういうものである。
たぶん対テロ戦争当事国のアメリカでさえ、芸能やスポーツのニュースの方がよほど関心を集めているものと思われる。
さて、「こんな組織の最高指導者をいくら殺したって意味はない。次から次へと新しい指導者が出てくるだけ」というのは誰でも抱く感想である。
だが、それでもやはり最高指導者を殺し続けるのには意味がある。
そんなことがずっと続けば、その組織は評判を失うからである。
人々に「どうでもいいニュース」「どうでもいい組織」と受け止められてしまうからである。
これ自体、テロ組織にとってはほとんど致命的な敗北だろう。
またこれは、攻撃側にとっても(特に無人機で攻撃するときは)けっこう面白いゲームみたいなものなのではなかろうか?
要するにこれはハンティングゲームでありアクションゲームである。
そういうゲームに毎日熱中している人は世界に何百万人もいるし、頭を使ったり操作テクを駆使したりするのは確かに面白く、充実感・達成感のあるものだ。
それがずっと続くなら、それはそれで望むところだと思っている戦争当事者もきっと多くいると思う。
たぶん我々は、またアクンザダ師が、またまたその後継者が、無人機攻撃で殺されたというニュースを見ることになるのだろう。
クリックもせず、見出しだけ見てスルーするような記事として……
タリバン、イスラム国、その他テロ組織が、世界の世間からこういう「どうでもいい扱い」されることを避けようとすれば、とにかく人目を引くような大規模テロをやり続けることが必須である。
もちろんそれは中東だのアフリカだのではなく、西欧諸国(日本も含む)で行なわなければならない。
最低でも、中国・東南アジアでやらなければならない。
これはどこか、ネット界での「炎上商法」にも通じるものがある。
残虐だろうが何だろうが、とにかく注目を集めることが組織の発展・延命に繋がる。
こういう意味ではテロ活動もまた、我々に卑近な炎上商法の一種と言えるだろうか。