プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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少子化要因としての大学進学~現代日本の教育費負担は史上最大の浪費か?

 22歳くらいで大学を卒業し、就職し、ある程度の収入になってから結婚する。

 なるほどこういう人生プランなら、初婚年齢は三十歳前後になるだろう。

 しかしどうしても疑問なのは、ここに大学が入る必要性があるのかという点である。

 はっきり言って世の中に、大学教育を受けることが必要な職業・職種・仕事ってそんなにあるものだろうか?


 かつて大学は、よっぽど勉強したい人や勉強のできる人が行くところであった。

 もちろん同年代の中にその数は少なく、卒業者は「学士様」とも呼ばれていた。

 今こう呼ばれることは絶無だが、今でも大学卒業者はその全員が学士の称号を持っている。(これを読んでいるあなたもたぶん持っている。意識も記憶もしていないかもしれないが。)

 しかし現在の大学は、「自分は勉強が嫌い/したくない/向いてない」と公然と主張する人でさえ「行くのが当然」の教育機関に――

 本人と親の意識の中では、義務教育と等しい場になっている。

 なぜ大学に行くのか/行ったのかと訊かれ、「もっと勉強したいから」と本心から答える人が、どれほどいるとあなたはお思いだろうか?


 生活保護についての記事でも述べたことだが、「被保護者の子弟が大学に行くための資金を、生活保護費に上乗せして支給すべきだ」という主張は、いまや世間に結構受け入れられる状態にあると思える。それは憲法で保障された、「健康で文化的な最低限度の生活」と見なされてもおかしくはない。

(「最低」と「人並み」は絶対に意味が違うのだが、生活保護界では往々にして同じ意味に解されている。)


(⇒ 2016年3月20日記事:生活保護の基本論:「人並み」と「最低限」は明らかに違う、ということ)

 

 人が「子どもをあまり多く産めない」と言う理由――「これがあるから(本当はもっと欲しいのに)子どもを作れない」と言う最大の理由は、何と言っても教育費の負担である。

 それは現代日本では、「大学(できるだけランクの高い大学)に入るための費用」のことを意味している。

 確かに、日本国民が年々費やす教育費というのは、天文学的な金額に及ぶだろう。

 そして学士号を持つ人の数と割合は増え続け、多くの会社では「大卒でない新入社員って、見たことない」状況を生み出してもいる。

 だが果たして、こうした日本人の高学歴化は、日本(及びその会社)の知的生産性や国際競争力の向上に役立っているのだろうか?

 もしそうなら日本の労働生産性があのギリシャより低いとか、一人当たりGDPのランキングが下落傾向にあることなどあり得ないように思えるのだが……

 いやもしかして、高学歴化が進んでいなかったらもっと酷いことになっていた、ということになるのだろうか?

tairanaritoshi.blog.fc2.com

 

 たぶんあなたも実感されていることと思うが、大学に入ったこと・学んだことは、社会に出てからの仕事にそれほど役立つわけではない。(あまり勉強していなかったのならなおさらである。)

 と言うより、「ほとんど関係ない」と言った方が正確かもしれない。

 私には大学に行く人が増えるより、専門学校に行く人が増えた方がよほど(本人と会社・社会の双方にとって)タメになると思われて仕方ない。

 しかも、国民みんなが莫大なカネをかけてわが子を大学に行かせ――

 その大学を出て就く職業が「飲食店店員」や「店頭販売員」や「営業マン・ウーマン」であることが全然珍しくない、という状況に到っては――

 これはもう人類史的な珍事というか、史上最大規模の莫大な無駄遣いではないかと感じられてくる。

 こう書いたからと言って、私がそれらの職種をバカにしているわけでは全くない。(だいたい、私も似たような仕事をしているのだ。)

 しかしそれらの職種に大学教育が必要だとか役に立つとかいう意見については、断固否定する。アドバンテージにすらなるのかならないのか怪しいものだと思う。


 繰り返しになるが、世の中に大学教育が必要な仕事ってそんなに溢れているはずがない。

 いったいあなたが今やっている仕事は、大学で学んだことがなければできないような仕事だろうか。大卒の方が成果を上げられるのだと言い得る仕事だろうか。

 そもそもあなたは、学歴主義を否定しているはずである。

 いや、面と向かって聞いたなら、百人が百人とも学歴主義を否定し・反対し・そんなのは下劣な考えだとも言うはずだ。

 学歴が大事なのだ、学歴が上の人の方が「上」なのだとネット上でほのめかしなどしようものなら、総掛かりで叩かれることは必定である。

 しかし、それなのに――

 自分の娘の結婚相手にナチュラルに学歴を求める親は、石を投げれば必ず当たるというほど多くいる。

 学歴が高い女性にこそ興奮する「学歴フェチ」という嗜好があるが、これとは少し違う意味で日本国民は「一億総学歴フェチ」と言えるかもしれない。


 大学進学が義務教育と等しいものと見なされている以上、それが少子化を加速させる要因になっていることは疑いようがない。

 それは早婚を阻害し、女性が子を産むのに最も適した20代前半をロスさせる可能性を跳ね上がらせるからである。

 むろん学生結婚したっていいのだが、やはりそれは祝福する気持ちより「早すぎる」という感想を人に抱かせてしまう。


 「大学に行くのが当たり前」という雰囲気は――

 間違いなく早婚を阻害し、そんなことは下流人間のすることであるというイメージを植え付け・広めている。

 よって、少子化の大きな原因をなしていると言わざるを得ない。

 しかもその雰囲気は、一人の子に対する過剰投資を延々と続けさせている疑いが極めて濃厚である。

 これもまた当然ながら、少子化の原因となっている。