プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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AKB(NMB)須藤凛々花の結婚宣言、及び一般女子の価値暴落について

 6月17日に行われたAKB総選挙において20位に入った須藤凛々花(20歳。NMB48所属)が、入賞スピーチで「結婚します宣言」したことが話題になっている。

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 「裏切られた」と感じたファンがネット上で発狂しているとか、
 元AKBの大島優子がインスタライブで「今自分が感じてるのは、この帽子に書いてあること」として「FUCK」と書かれた帽子を指さしたとか……
 先日記事の囲碁と同様、私はAKBはじめアイドルの世界に全く関心がなく、さすがにAKBのメンバーの名前くらいはいくつか知っているものの、顔と名前が一致する者は一人もいない。
 しかし、いくらAKB(と、それから派生した「48」グループ)が国民的人気アイドルとは言え、私と同程度の知識・関心しか持っていない人は、国民の50%くらいいると思う。
 そんな人間から見れば、まず「恋愛禁止」の規則を破ったからと言って、それが裏切りになるというのがまずおかしい。
 「規則は破られるためにある」とは言わないが、恋愛禁止って人身売買契約と同じで、たとえ本人がOKしても“公序良俗違反”で無効になる類いの契約である。
 いっとき新日本プロレスオカダ・カズチカも「結婚禁止」が新日本との契約条件になっていたらしいが、もちろんこれも無効だろう。
 だいたいコアなAKBファンって、本当にAKBメンバーの全員が恋愛禁止を守るなんて信じていた(いる)のだろうか。
 そんなバカなこと信じるのは度外れてピュアすぎると思うのだが――まして結婚するからって本気で怒るなんてどうかしてると思うのだが。
 
 ファンならぬ無関心者としてもう一つ不思議に思うのは――
 コアなAKBファン&その他アイドルファンというのは、大好きなアイドルと自分自身が結ばれる可能性が0.01%でもあると、本気で思っているのだろうかということである。
 もしそうでないとしたら、自分の女になることなど絶対ないとわかっているのに、それでも(CDを一人で何十枚何百枚と買って)投票券を手に入れ、握手券をゲットして“握手するためだけに”列に並んでいることになる。
 今までもさんざん言われてきたことではあるが、部外者にとっては理解しがたい愚行である。
 もちろん当の本人にそう言えば、「オレはそんな不純な気持ちでやってない。純粋に好きだから、応援したいからやってんだ。わからん奴は黙ってろ」と怒るだろう。
 そう、私も、理解不能だからと言ってバカにする愚は犯したくない。
 だいたいAKBらアイドルの生み出す富は、とてもではないがバカにできる規模ではない。

 しかし私が興味を持つのは、この現象を別の視点から見たらどうだろう、ということである。
 その視点とは、「男性からの投資市場における、一般女性の価値の暴落」というものである。

 まずわかりやすく、男性が投資する対象は「女性」だけだと仮定する。
 投資するのは「カネ」の他に「好きだという気持ち」の二つだとする。
(「好きだという気持ち」は長いので、「恋愛心」と呼ぼう。「嗜好心」と呼ぶのも捨てがたいが。)

 もしAKBらのアイドルがいなかったとすれば、いま現に彼女らに向けられている男性のカネと恋愛心は、全部とは言わないまでも一般女性に回っていたはずである。
 しかし現実には、生身のアイドルどころか二次元美少女キャラにすら、一般女性はシェアを奪われている。
 
 しかも前述のように、アイドルも二次元キャラも「自分の女になる可能性は全くない」にも関わらず、なお好き好んで投資する男性が相当数に上るのである。
 これはほとんど「(身近な)一般女性には投資する価値がない」、すなわちゼロ価値と見なされていることに等しい。
 そのことが“足による投票”ならぬ“投資による投票”に示されているのではないだろうか。

 まとめると――
 ここ数十年間、一般女性は「男性からの投資市場」においてアイドルと二次元キャラにシェアを奪われ続け、敗走し続けてきた。
 最初の仮定は明らかに誤りであり、男性が投資するのは女ばかりでなく車もバイクもゲームもその他夥しい対象があることを想うと、ますますそのシェア縮小は鮮明に見えてくる。
 これについて、「いや、うちの製品は悪くない。受け入れない市場(消費者)が悪い」と反論するのが最低最悪の態度だというのは、マーケティングの本を読むまでもなくわかる。
 これはやはり、一般女性は男性から見て魅力がないと考えるのが素直である。 
(おそらくもっと正確に言うと、アイドルや二次元美少女に比べて「相対的に」魅力が低下した、ということになるのだろう。)

 「AKBがそんなに美人とは思わない。そんなに可愛いとは思わない」と言う男女は多くいる。
 しかしたとえそれが真実であり本心だったとしても、一般女性の質(主に容姿的なもの)というのはほとんどの場合それ以下だということを、本気で疑う人がいるだろうか。

 一般女性が男性からの投資市場において、どうやったら自らのシェアを回復できるか――
 その方法は、私には全然わからない。
 品質向上もマーケティング強化も、では具体的にどうするか思いつくことがあまりない。 
 しかしこれが(主因とまでは言えないにしても)、非婚化・未婚化の大要因になっていることは間違いあるまい。
 
 最後に、もう一つ不思議に思うこと。それは――
 男性がその投資を一般女性から他のものにシフトさせたとすれば、女性の(カネと恋愛心という)投資も、一般男性から何か他のものにシフトしたのではないかと考えるのが自然である。
 では、その何かとは何なのだろう。
 解散したSMAPのような男性アイドルか、美容か自己研鑽か、うまいもん巡りか女子会か、はたまたボーイズラブ漫画か――
 しかしそのどれも、男性が一般女性から切り替えたほどの投資規模とは思えない。
 もしかして女性からの投資については、それほどのシフトは起こっていないのだろうか。
 だとするとこれは、一般女性にとって悲劇である。
 投資相手はますます自分以外のものに投資先を変更しているのに、自分の方は依然として一般男性に投資し続けている(投資したがっている)としたら……
 これでAI搭載の美人型アンドロイドでもできた日には(絶対できるが)、一般女性という投資家集団はいったいどうなってしまうのだろうか。

将棋・藤井四段の語彙力は「すごい」のか-マスコミはアイドル製造業である

 将棋の世界で、まだ14歳の藤井聡太四段が無類の快進撃を続けているというので話題になっている。
 私は将棋に何の関心もないのだが、もちろんネットニュースにたびたび記事が上がっているので名前だけは知っている。
 そして今回は、こんな記事がヤフートップニュースに上がっていた。
 藤井四段が、その年齢にしてはスゴイ語彙力を持っていて注目が集まっているというのである。

 記事を読んでみると、そのスゴイ語彙力というのは「醍醐味(だいごみ)」「望外(ぼうがい)」「僥倖(ぎょうこう)」という言葉を使ったからだということがわかる。

 ……いや、これ、そんなにスゴイか?……
 おそらくこの記事を読む十四歳の中学生のかなりの人数は、「いや、オレも(アタシも)知ってるし」と思ったと思う。
 特に「醍醐味」なんてのは、そうとうバカなレベルの中学生でも日常生活で使っていても不思議ではない普遍的な言葉である。(漢字で書けるかどうかは別として……)
 「望外」という言葉にしても、キリッと口調を改めて「いやあ、望外の喜びです」なんて冗談で言うことはあるのではないだろうか?

 私がこの記事をクリックして感じたのは、「ああ、また“持ち上げ”が始まったか」ということである。
 もっと悪い言い方をすれば、「タイコモチ(太鼓持ち)」や「へつらい」・「おべっか」・「はやし立て」が始まったということである。
 マスコミは報道業とされているが、しかし報道だけやっているのではない。
 マスコミは(ネットニュースも含め)ヒーロー・ヒロイン・アイドルの大手製造業者であり、時としてそれが本業ではないかとさえ思わせる。
 しかしそれも、意地悪い見方をすべきでないかもしれない。
 何と言ってもそれは重要なメシのタネなのだから、作るなと言うのも生存権ないし企業活動の否定ということになってしまうのかもしれない。
 それにしてもこの記事、最後は
「藤井四段が通う名古屋大教育学部付属中学校(名古屋市千種区)で担任を務める数学担当の大羽徹教諭(39)は「僥倖は、自分もどういう言葉なのだろうかと思って調べた」と笑う。」
 と締められているのだが――
 大羽先生、あなたは数学とはいえ学校の先生でしょう、そんなこと知らないで良かったんですか、と感じたのは私だけではないはずだ。
(しかし、こんなこと知らなくても教員試験に受かるというのは、教員志望者にとっては心強い情報である。)

 マスゴミとも称されるマスコミは、水に落ちた犬をボコボコに叩く習性で悪名が高い。
 特に政治・行政に対しては、何もなくても普段から「叩くスタンス」にある。
 しかし一方、誰かアイドル候補が出てきたら、手ぐすね引いてホメ上げる用意ができていることも見逃せない。
 近くはあの眞子さまと婚約した小室圭さんだが――

 あの人のマスコミ対応は、ただ「時期が参りましたら、あらためてお話しさせていただきます」とか、「今の時点では、お話しするのを控えさせていただきたいと思います」とかいう言葉を繰り返していただけである。
 これはせいぜい“慎重な応答に終始した”と書くべきだと思うが、こんなのでもマスコミの手にかかると“責任感を感じさせる、立派な態度”に変換されてしまうのだ。
 またあなたは、あの小保方晴子(33歳)がSTAP細胞を発見したという一報直後数日間の、彼女をトキメキヒロイン扱いする報道を憶えていないだろうか。
 
 「思春期女子の十八歳は、箸が転んでも大笑いする年頃」と言われる。
 そして多くの分野では、ヒーロー・ヒロイン・アイドルの芽が出た人間は、たちまちその一挙手一投足がマスコミに賞賛されることになる。
 それこそ「醍醐味」という言葉を口にしただけで「スゴイ」と報道されるようになる。
(今のネットニュースでやたら毎日、有名人の行動・発言について“絶賛の嵐”“共感の嵐”などという記事タイトルが出てくるのも、この一環である。
 とにかくマスコミは、製造業者として注目と売り上げを集めなければならないのだ。)

 もしこれが「昔の若殿様」に対する周囲の態度だったとしたら、それを是とする人間は全然いまい。
 それは間違いなくバカ殿を作る態度、おべっか使いの佞臣(ねいしん)のやることだと、誰もが感じるからである。
 しかし、だったら、現代の十四歳に対しても同じように感じるべきではないか?

 正直私は、この記事を書いた朝日新聞記者も、“これくらいでこんなに褒めるのは「贔屓の引き倒し」じゃないか”と思っているように思う。
 もしかしたら担任の大羽先生も、僥倖くらい知っているけど“空気を読んで”知らなかったと答えたのではないかと思う。
 そうだとすると、「宮仕え(食うために仕事する)」も「空気を読む」ことも、始末に負えないくらいアホらしく感じられる。

“扇風機にあたるカリフ”バグダーディ死亡? どうなるイスラム国

 唐突なニュースだが、イスラム国(IS、ISIS)の最高指導者と目されるアブーバクル・バグダーディ(45歳)が死亡したらしい。
 しかも殺ったのはロシアの空爆だという。
 6月16日のロシア国防省発表によると、5月28日未明にシリア北部のラッカ(イスラム国の首都)南郊を空爆した際、バグダーディが死亡した可能性があるとのこと。(確定とは言っていない。)
 この空爆最初からIS指導部の会合を狙った(無人偵察機で情報入手)ものだというから、この死亡情報が真実だとすれば、まさに“ジャストミート!”“ナイスショット!”の類いである。
 さらに他の幹部たち、中堅野戦指揮官ら約30人、警護戦闘員ら約300人も一緒に撃滅したらしいので、文句の付けようもない大戦果だと言える。
 思えば第二次世界大戦末期、ナチスドイツの首都ベルリンへ先に到達しヒトラーを自殺に追い込んだのも、ソ連であった。
 そして2017年の現在、またもアメリカを差し置いてロシアが敵大将の首を挙げたことになる。
 政治的な影響なんかはさておくとして、純粋に軍人としてアメリカ軍の将兵は、さぞ悔しがっていることだろう。 

 こういうニュースが流れると決まって大量に出てくるのは、
「これでテロが終わるわけじゃない」
「最高指導者を殺しても、いくらでも次が出てくるだけ。何の解決にもならない」
 といった否定的な――シニカルというか、斜(はす)に構えたというか――言説である。
 しかしこれについては、以前の記事でやや詳しく書いたことがある。

 カリスマ的な大将を殺せば、その部下たちは必ず分裂・抗争する。
 これは絶対法則であって、避けることはまずできない。
 テロが終わらないのは事実だろうが、今までだってイスラム国は「個人の通り魔殺人」と全然変わらない「テロ」を自分がやったと称してきたのだから、そりゃテロが終わるわけないのは当たり前である。
(この世からイスラム過激派が完全消滅したとしても、トラックを暴走させて人殺しする奴は絶対にいる。)
 これからイスラム国がいくつかの小派閥に分裂すること、それらが互いに戦闘し始めるのはほぼ確実で――
 そうなると彼らの唱える「大義」も、説得力が分解されて薄まってしまうだろう。
 重要なのは、織田信長死後に秀吉と柴田勝頼が争って秀吉が覇権を握ったように、分裂を勝ち抜く一者を出さないようにすることである。
 
 そのためには、「勝ちそうになってきた方をその都度攻撃して叩いておく」というような、こまめで難儀な対応が必要になるのは確かだろう。

 ところでバグダーディ師は、オスマン・トルコ帝国滅亡後は空位となっていた「カリフ」を100年ぶりに自称した男である。
 そして、それだけのカリスマ性を持った男だと言われてきた。
 しかし私が「こりゃダメだ」と思ったのは、彼が演説する写真と映像を見たときである。

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 もう、すぐにお気づきだろう。
 演説する彼の背後で、扇風機が回っている。
 何を言っているのかわからないというのもあるが、はっきり言って、演説の内容よりも扇風機の方がはるかに気になってしまうのだ。
 普段から扇風機に当たるなとは言わないが、こんな重要な演説(なのだろう、たぶん)の時ぐらい扇風機を回すなよ、と誰でも思うのではないか?

 「扇風機に当たりながら演説するカリフ」と聞いて、しかも映像で見て、滑稽に感じない人はいない。
 いったい、ヒトラーが扇風機に当たりながら演説したか。
 ケネディ大統領が扇風機に当たりながら演説したか。
 もっと言えば、イスラム教の開祖・ムハンマドが扇風機に当たりながら教えを説いたか。
 むろん当時扇風機などなかったが、では(よくある王様のイメージのように)大きな扇を部下に持たせて扇がせていたか。
 敬虔なイスラム教徒は、そんな光景を思い描いているものなのか?

 もし彼らの背後や横で扇風機が回っていたら、それは間違いなくお笑い映像と見なされる。
 これは「中東は暑いから……」で済まされる話ではない。
 バグダーディが体が弱く暑さに耐えられないというなら、アイスノンでも服の下に着けて演説すべきであった。 
 きっとトランプ大統領でさえ、中東で演説するからといって扇風機にあたりはしない。
 これだけで彼に有能なイメージ戦略アドバイザーがいないこと、もしくはモノ言える部下がいないことがわかるし、そもそも自分で気づけよと思う。

 バグダーディは、演説のとき扇風機にあたる男であった。
 そんな彼でもカリスマと見なされたのだから、それはもちろん次から次へとカリスマは湧いて出るに違いない。
 だが、だから何だというのか。
 世の中はそういうもの、というだけではないのか。
 それはともかく、次にニュースになるのは“首都”ラッカの陥落ということになるのだろう。 
 そして次はシリア&ロシアと、アメリカ&イラク&シリア反体制派らの対立がむしろ焦点になるはずだ。
 一難去ってまた一難、一つの問題が片付けば次の問題がすぐ出てくる――
 これもまた、世の中はそういうものと言えるだろうか。

【補遺】
 バグダーディが5月28日に死亡したとすれば、6月7日のイランの首都テヘランでの銃撃戦テロは、彼の死後に行われたことになる。
 だとすると、イスラム国の分裂はまだ始まっていない――通り魔の尻馬に乗るのではなく、まともなテロ工作を遂行する能力はまだ失われていない、とも言えそうだ。
 だが、今イスラム国が行うべきはラッカ防衛に資する直接的な反撃である。
 どうせ自爆テロをやるなら、前線の米軍・イラク軍の司令部ないし航空基地とかに行うべきである。
(しかしたぶん、ロシア国内での報復テロをやる/やりたいのだろうが……)